【事例分析】なぜDHCは薬機法違反ではないのか?マーケティング分析
- Miyu Hosokawa

- 2025年12月30日
- 読了時間: 8分
更新日:1月4日
「他の会社は攻めたマーケティングをしている」からと言って、薬機法を違反してしまう会社は少なくありません。
例えばサプリメント大手DHCは薬機法に詳しくない人が読むと、ほぼ確実にこう感じます。
「これ、効くって言ってない?」
しかし、DHCは薬機法をギリギリで破っている会社ではありません。
むしろ、この分野においては第一人者。
ではなぜDHCは成立して、同じことを中小企業がやると問題になるのか?
本記事では、その構造をマーケティング設計の観点から分析していきます。
目次
いつでもどこでもハンニバルゥ〜!
な、ブランディングコンサルの細川です。
営業企画資料の制作を軸に、マーケティング・販路拡大支援を行っています。
競合分析は販売の第一歩。
DHCはとんでもなく攻めたマーケティングをしているように感じます。
実際にDHCの製品ページや特集を見ると、「かすみ・ぼやけを改善」「血中の中性脂肪値を低下」といった文言が並んでいます。
グラフや試験結果が大量に提示されるため、「これ、薬機法的にアウトでは?」と思わなくもありません。
しかし、ここが重要。
DHCは「製品の効能」は全く語っていない。
あくまで「成分に対して報告されている機能」を、制度に則って開示しているだけです。
本記事は、健康・美容ビジネスの事業者、制作会社、広告代理店、薬機法に悩むマーケティング担当者に向けて書いています。
DHCの薬機法に則した構成
前回分析したサントリーに比べて、DHCは確かに攻めた構成に見えます。
・トップ、製品ページ(販売・クロージング)
・特集ページ(販売・クロージング)
・便利サービス(啓蒙)
・メルマガ、カタログ請求(関係性維持)
ただしDHCは、終始クロージングを目的とした構成です。
人気商品「ルテイン」の構成を見てみましょう。
・ルテイン
・ルテインとは:緑黄力野菜に多く含まれる成分の一種で、
目がぼやけるなどを改善します
・問題提起:昔はくっきりだたったのに、あれ…ぼんやり
・検査結果:(※本製品を用いた試験ではないと明示)
・成分
・機能性表示
・愛用者の声
一見、「ルテイン」の効能で訴求しているように見えますね。
おっと。これは薬機法違反では?!
しかし実際には、ほぼ全てが届出表示文言の言い換えです。
DHCのマーケティングは参考にならない
事業主や、依頼された制作会社、マーケティング会社がDHCを見て「攻めてるじゃん!」と感じたならば、参考にしてはいけません。
なぜならば、DHCは攻めてないからです。
成立している理由は、以下の要素が揃っているからです。
①機能性表示食品制度の性質
機能性表示食品はサントリーも使っている制度。
これは、国の個別審査がない代わりに、科学的根拠や表示文言、エビデンスの整合性の据えてが事業者責任の制度です。
言える範囲は、かなり広いですが、ミスった瞬間に全責任を負う制度でもあります。
②DHCの文言はオリジナルではない
ルテイン製品ページを見てみると、「効能を言ってるじゃないか!」と憤慨したくなるかもしれません。
しかし、実際は届出表示文言の言い直しが大半です、
「改善します」「維持します」「機能が報告されています」。
訴求のための表現にしてないんですよね。
機能の説明はしているけど、主張はしない。
これを徹底しています。
③研究レビューを活用して、違反項目を先に潰している
DHCは
・本製品を用いた試験ではない
・代表的な臨床試験の一例
・研究レビュー採用論文のうち
と巧妙に逃げ道を作っています。
これはグレーゾーンを作っているのではなく、薬機法・景表法・その他健康増進法などが要求してくる前提条件を全部先に置いているだけです。
すなわち、行政を筆頭とした第三者が、突っ込む余地を先に潰しています。
もし、私が「DHCのようなマーケティングをしたい」と頼まれたら真っ先に断るでしょう。
無理です。それくらい、無理。
機能性表示食品制度を「構造」で使い切っている
DHCが薬機法違反しているように見えて、成立している最大の理由は、機能性表示食品制度の使い方が半端なく上手い点にあります。
ポイントは3つです。
① 主語を一貫して「成分」に置いている
DHCの文章を分解すると、ほぼ全てがこの構文です。
本品には〇〇が含まれます。〇〇には〜する機能が報告されています。
ここで語られているのは、「DHCのサプリメントを摂取することで、改善します!」ではなく、「成分に、そういう報告がある」という事実だけです。
受け手の頭では「商品=効く」に変換されますが、文章の責任主体は常に成分にあります。
すなわち、DHCはサプリを訴求していないんですよね。
成分の説明しかしていません。
余談ですが、DHCのルテインの正式名称は「ルテイン含有食品」。
うまい!
② エビデンスリンクを防御装置として大量設置
DHCの特徴は、消費者庁への届出情報、研究レビュー、作用機序、安全性評価などをこれでもかとリンクしている点です。
これは「説明のため」だけではありません。
「うちは、全部出してますよ」
「隠していませんよ」
という姿勢そのものを示すためです。。
逆に薬機法を違反してしまっている会社ほど、届出情報やエビデンスの出典がありません。
③ 読者の誤認を「否定しない」が「裏切らない」
とはいえども「ルテイン含有食品」と言わずに「機能性表示食品ルテイン」と大々的に表記して、優良誤認しそうな表現です。
おそらく、誤認しやすい構成であることを理解したうえでそれを積極的に否定もしない、かといって裏切る表現は一切しない方針をとっています。
つまりDHCは、
「そう思う人がいるでしょうが、我々は制度上言えることしか言っていない」という極めてクールなスタンスに見えます。
そうでしょう。だって、真似できないもの。
顧客層が、この設計を成立させている
前回、サントリーウェルネスのwebマーケティング構造を分析してみました。
サントリーは教育・啓蒙・クロージングを分離しているのに対し、DHCの場合は一見攻めているように見えます。
しかし、この戦略はサントリーの顧客とDHCの顧客との違いでもあります。
DHCの顧客は、
・成分名に抵抗がない
・用量・mg表記を読む
・届出番号や注意書きを読み飛ばさない
※読んでない可能性もありますが
健康リテラシーが大なり小なりある層です。正しくは自分で情報を取りに行く層です。これはDHCの社史が関係していると考えられます。

DHCは元々、語学や専門書の翻訳会社として始まりました。
一般書と違って、最初から活字を読む人、活字で知識を吸収する層を相手にしてきました。
一方でサントリーは酒類・飲料メーカーで世界観でファンを育ててきた企業の印象があります。
例えるならば、DHCは「ついてきたいやつだけ来い」、サントリーは「みんなで冒険しようぜ!」なイメージでしょうか。それだからか、DHCはついてくるファンだけを相手にする、サントリーはファンに対して「かわいいねえ、えらいねえ。じゃあ、今日はこれを教えてあげるねえ」と育成する……そんなきらいを感じます。
中小企業がDHCを真似ると、なぜ危険なのか
「DHCが事実しか言っていないのは分かった!では、我が社もエビデンスを全て開示しよう!」
中小企業がDHCを真似すると、ほぼ確実にこうなります。
・主語が商品にズレる
・注意書きが弱い
・エビデンスがリンクでなく「画像」になる
・顧客が読み飛ばす前提で構成される
結果、「言ってはいけないことを、行っているように見える」のではなく「実際にNGを言ってしまっている」状態になります。
優秀なマーケターがついているから大丈夫だ!と舵を切りたくなるかもしれません。
無理です。再現性がありません。
DHCの顧客層とは違うし、DHCと違って、顧客育成ができている訳でもない。そして、DHCと違って、翻訳出版由来の情報文化があり、法務・表現チェック体制が整っています。
これらがない状態で表面的にDHCを模倣すると、いつか破綻するでしょう。
DHCは「攻めている」のではなく「信用を積み上げている」
総括すると、DHCは効果を誇張しているわけでも、法の抜け道を使っているわけでもありません。
制度を正面から使い、誤解されやすいほど誠実に情報を出しているだけです。
それが結果として、「摂取したら効きそう!」という印象を育んでいます。
私はDHCは全く参考にならないな、しちゃいけないなと感じました。
しかし、この記事を読んだ方が取り扱う製品が、どこをターゲットにしていて、彼らのリテラシーがどのレベルにいるのか?
また、クロージングするためにはどの程度の教育レベルが必要なのかが判断材料になります。
DHCの場合は、「なぜその成分が必要なのか?」という一般論がほぼ語られていません。
これは「理解した人が判断する」ものとして割り切っているのです。
また、DHCはぱっと見は攻めていますが、過去に行政指導や表現修正を経験しています。
なので、どこまでやると怒られるのか。そのノウハウを持っているのも強みですね。
それにしても、DHC怖……
※本記事は公開されている情報をもとにした分析であり、特定企業の効果効能を保証・推奨するものではありません。
※また、参考にした企業の売り上げを保証するものではありません






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