スタートアップ・マーケティング会社のための薬機法・景表法
- Miyu Hosokawa

- 2025年12月20日
- 読了時間: 8分
更新日:2025年12月30日

健康・美容ビジネスに携わる会社にとって、薬機法・景表法は「後から対応するもの」ではなく、事業設計の初期段階で組み込むべきリスク管理要素です。
特に健康・美容領域では、制作会社・広告代理店・運用会社など、複数の関係者が関与することで違反リスクが拡大しやすくなります。
本記事では、営業企画とマーケティング設計の視点から、スタートアップや支援会社が押さえるべき薬機法・景表法の構造的な注意点を整理します。
目次
いつでもどこでもハンニバルゥ〜!な、ブランディングコンサルの細川です。
営業企画資料の制作を軸に、マーケティング・販路拡大支援を行っています。
医療業界の経験を活かして、健康ビジネスを始めよう!お客様が喜んでくれる製品を届けたいから、美容業界で独立しよう!
そんな方は多いでしょう。
しかし、スタートアップ企業にとってほぼ必ず直面するのが薬機法と景表法の問題です。
もし違反してしまった場合、「知らなかった」では済まされません。行政は容赦無く指導しにやってきます。
薬機法・景表法違反するとどうなる?
大前提として、薬機法・景表法違反は「販売している会社」だけの責任ではありません。外注先や製造元も追求対象になり得ます。
では、薬機法と景表法を見ていきましょう。
薬機法(旧薬事法)
何人も医療品、医療機器等について虚偽または誇大な記事を広告し、記述し、または流布してはならない
上述の通り、責任の対象は自社(販売事業者)だけではありません。
成分設計などをした製造業者、依頼を受けたデザイン会社、広告・マーケティング運用会社、商社、営業代行も責任の対象になり得ます。
行政指導では外注先も関与者として事情聴取が行われ、「表示内容の作成にどこまで関与したのか?」を確認されます。
もし、私がお金に腐心して薬事法・景表法違反が認められるのに「今回だけですよ…」と依頼を受けたとしましょう。私も指導対象となります。
景表法
事業者は自己の供給する商品または役務について、不当な表示をしてはならない
ここでの「不当表示」とは優良誤認表示と有利誤認表示が含まれます。
違反した場合は行政指導、改善が見られない場合は行政処分・業務停止になります。会社名も公開されます。
表向きの対象者は「事業者」。
そして、外注先にとって重要なのはここ。
事業者以外のものであっても、消費者庁長官の求めに応じ、 資料提出等をしなければならない
広告代理店、制作会社、デザイン会社、マーケティング会社は調査・聴取・資料提出の対象になります。
たとえ、言われた通りに作成したとしても責任追及から免られません。
厚労省・都道府県上の運用では、表現提案、原稿作成、表現修正に関与していれば、広告行為の一部を担ったものとして見られます。
薬機法・景表法のよくある誤解
「最終判断はクライアント。薬事法チェックは先方の責任だし、エビデンスがあるから大丈夫!」は、薬事法・景表法上の免責にはなりません。
薬機法第66条、景表法第5条では、「どこまで表現に関与したのか」が争点となるので、自社だけの責任では済まされないのです。
行政処分になった場合は措置命令が下され、徴課金が発生します。場合によっては倒産危機に陥ることもあるでしょう。
そして社名が公表され、広告が停止され、HPの作り直しだけでなく、今まで積み上げたSEO資産を破棄することにもなりかねません。
だからこそ、スタートアップの段階で薬事法・景表法の表現ガイドラインを策定するなどして仕組み化するのが大切です。
スタートアップ企業がやりがちな「薬事法違反の構成」
スタートアップ企業の薬事法違反は、表現の単語ミスというより構造やミスで起こります。
典型的なのが、以下の流れです。
問題提起
科学っぽい説明
「だから効く」への飛躍
疑似科学ワードの投入
まず、大手企業の文章と比較しましょう。
流行りの水素水を例にします。

ロート製薬の水素水「悠久の恵」
屋久島の天然水に水素を溶けこませた缶入り水素水。 清らかな屋久島の名水を100%使用し、高圧で水素を溶かし込みました。 そのため味や水素はそのまま。 機密性が高いアルミ容器で水素量をキープ。
※文意が変わらないように意訳しています。
続いて、スタートアップや中小企業がやりがちな、薬事法・景表法違反セットの構成です。
※AIで作成したらNG例です。科学的根拠はありません








いかかですか?身体に良さそうなのは、圧倒的に後者でしょう。
しかし、大手は長年の薬事法・景表法違反の経験や、監視の対象になりやすい。なので徹頭徹尾「機能の説明」や「事実の説明」に留まります。
特にSEO対策の記事では、
・専門家監修風の構成
・図解・エビデンス風画像
・海外論文の断片引用
が組み合わさると、「暗黙の効能訴求」になってしまいます。webマーケティング会社はご注意ください。
なぜ大手企業ほど「地味」な表現なのか
屋久島の天然水に水素を溶けこませた缶入り水素水。 清らかな屋久島の名水を100%使用し、高圧で水素を溶かし込みました。 そのため味や水素はそのまま。 機密性が高いアルミ容器で水素量をキープ。
ロート製薬の水素水「悠久の恵」。
お世辞抜きにしても、地味な表現と言わざるを得ません。
他にも「極潤」「メラノCC(特定医薬部外品)」「メンソレータム(特定医薬部外品)」の製品ページを見ると、やはり機能の説明だけ。
大正製薬やサントリー、DHCなどのLPや商品ページを見ると、「効く」「改善」「治る」といった言葉はほとんど出て来ないんですよね。
代わりに、成分の性質や、使用シーン、設計思想や品質管理体制の説明くらいです。
このように地味な表現は、大手だからとか、広告予算が潤沢にあるからとかではありません。長年の行政指導・摘発事例から最適化された表現です。
大手ほど、「何を言わないか」にコストをかけています。
竹取の翁くらい前、NECさんとお仕事した時に同様のことを仰ってました。長年の経験と数多のミスが、ここまで厳しいコンプラになっていると。
景表法違反は摘発されやすい
景表法違反は薬機法よりも発見しやすく、証明しにくいのが特徴です。
理由は、一般消費者が誤認する表現か、優良・有利と誤解させるかが判断基準となるからです。
よくある景表法違反は「NASAが開発/応用」「米軍企画」「世界最高水準」など。
たとえば、「NASA由来技術」と「NASAが開発・採用」では、消費者の受け取り方がまったく異なります。
特にNASA認証や米軍規格(ミルスペック)はオープンソースで公表されます。
実際はNASAの認証を受けていないのに。ミルスペックをクリアしていないのに。「採用された」と嘯くのはやめましょう。調べれば一発で分かります。
健康・美容業界が「代理店ビジネス」になりやすい理由と危険性
最初から代理店ビジネス前提でビジネスモデルを組み立てている場合は要注意。

特に健康・美容業界は、
・OEM
・インフルエンサー
・アフィリエイト
・代理販売
といった多層構造になりやすい業界です。
その結果、表現の統制が取れない、下流の違反が上流に跳ね返る、炎上時の責任所在が曖昧になるといった問題が起こります。
会社間で「問題が起きた場合は、当事者が全責任を負う」と契約していても、行政指導・行政処分では関係ありません。
だからこそ、事業初期での「表現ガイドライン策定」が重要になります。
これは単なる禁止ワード集ではなく、
・使ってよい表現の型
・説明できる範囲
・NG構成例
・外注時のチェック基準
まで落とし込む必要があります。
特にリスクになりやすいものに関しては、スタートアップの段階から策定して随時追加するのが無難です。
マーケティングにおけるセカンドオピニオン
社内・制作会社・代理店だけで薬事法判断を完結させるのは非常に危険です。理由は単純。全員が「当事者」だからです。
そこで有効なのが、マーケティングセカンドオピニオンの考え方です。
・表現を止める
・リスクを言語化する
・代替案を出す
この役割を、利害関係のない第三者が担うことで、
・無駄な作り直しが減る
・広告停止リスクを回避できる
・長期的なSEO資産を守れる
という効果が生まれます。
薬機法・景表法は「後から気をつけるもの」ではありません。
スタートアップの段階では「バレない」かもしれません。けれども、拡大すればするほどリスクは上がり、体制を整える難易度も上がってしまいます。
もし、
・これから健康美容業界に参入する
・広告・SEO・LPを強化したい
・外注先の表現やエビデンスの根拠に不安がある
のであれば、一度第三者の視点でのチェックを入れることをおすすめします。
それはコストではなく、
事業を止めないための保険です。


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